変わらぬ手作業、手間をかけて 強い糀を育てる 天然自然の発酵食品 甘酒で健康に

2.発酵調味料の歴史

まずは、発酵調味料について簡単にみてみましょう。
味噌、醤油、ミリン、酢と、日常で使う調味料のほとんどは発酵させて作ります。

では、発酵させない調味料って何でしょう?
・・・と、思いつくのは塩くらいでしょうか。あと、砂糖とか。
ちなみに、ソース類も糀は使いませんが、やっぱり発酵してます。
もしも、発酵ができなかったら、食べ物は、塩と砂糖味しかないんですね。
考えただけでも悲しくなります。

さて、はるか昔の人類も、はじめは猿がジャガイモを海の水で洗うように、塩味しかなかったのでしょう。
そのうちに、あまった魚や肉を塩水や塩で漬けておくようになります。
塩漬けにしておくと、空中にある乳酸菌などが入り込んで発酵します。
そのまま放ったらかしておくと、魚の身や肉は分解されていき、液体が増えていきます。
この液体には、塩味にうま味が加わっていて、複雑な美味しさになっていたんですね。

もちろん、普通なら腐ってしまうことも多いでしょうから、気温や季節、場所、管理の状態によっては美味しい液体になると分かっていったのでしょう。

この発酵液体調味料は、世界のどこでも人の暮らしが始まると共に、作られていました。

日本よりも歴史の古い中国では「醤」と呼び、歴代2代目の王国となる周(紀元前700年頃)には、専門の職人がいたようです。
また、古代ローマでは「ガルム」と呼ばれる魚醤があったそうです。

日本でも魚醤が作られてきました。
現在でもハタハタで作る「しょっつる」は有名ですね。
強烈な匂いの大島のくさやも、内臓や骨を漬け込んで魚醤のようになった汁に漬け込んだものです。
東南アジアでは、タイの「ナムプラー」、ベトナムの「ニョクマム」など、各国、各地域で独自の魚醤を競っています。
ヨーロッパでは、イタリアのアンチョビなどは魚醤の一歩手前のようなものでしょう。

いずれも、独自の臭み、旨味とコク、塩味が混ざりあって、食べ物にたまらない風味をつけます。

さて、魚醤の製法が確立されてくると、ほかの物も漬けてみよう、となります。
そこで、大豆や雑穀、米も漬けてみることになります。
これが、味噌や醤油のご先祖様ですね。

野菜を漬けると塩漬けになりますが、これにアミの塩辛や、唐辛子などを入れるとキムチです。
アミの塩辛は、魚醤になる手前の段階です。
つまり、魚醤の技術を応用した、良質の乳酸菌漬物が、キムチといえるでしょう。
(キムチに唐辛子が入ったのは18世紀です)

が、それぞれ米のデンプン、タンパク質、脂肪を分解して、甘味のブドウ糖やオリゴ糖に、また旨味のアミノ酸に変えていきます。

こうして、人々は、“あまった物をいろいろ漬けてみると、保存になり、上手くいくと発酵してさらに美味しくなる”技を磨いていきます。

そして、糀が見い出されると、発酵文化はさらに進歩します。 

 


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